沈船を彩るヨスジフエダイ、実は外来種であり、悲劇の生物だった

2023年11月03日

沈船や浅瀬リーフで大きな群れを形成しているヨスジフエダイ。
黄色い身体に縦に入る青い線が目を引く、南国のハワイの海を彩る写真映えする生物です。
実はこの生物は、人間の食料調達の目的でハワイに持ち込まれた外来種ということをご存知でしょうか?

ハワイ名は【Taape タアペ】、英名は【Bluestripe snapper】、和名はヨスジフエダイ。
沈船シータイガーやYO-257、サンペドロ、浅瀬リーフではケワロパイプで見ることができます。

遡ること1950年代、ハワイの漁業資源の減少に直面し、海洋調査が行われました。
その結果、草食系の魚が大多数を占めており、食物連鎖のピラミッドのバランスが悪いと結論づけられました。
ピラミッドの欠けた部分は中型の肉食系生物で、将来ハワイの漁業資源のさらなる減少に繋がる考えられていました。
そこで食用魚の役割も果たし、ピラミッドの空白の部分を埋めれる11種類のハタ科・フエダイ科がハワイの海へと放流されました。

1955年から6年に渡って、ヨスジフエダイは3200匹が放流されました。
放流場所はオアフ島です。全部で11種類放流されたのち、現在まで生存しているのは3種類だそうです。その中でもヨスジフエダイが最も繁栄した種でした。
その後の調査の結果、オアフ島から1367マイル、およそ2200キロ先のハワイ諸島北西部のミッドウェー島まで生息範囲が広がっていました。

しかし予想外のことが起こりました。
ヨスジフエダイは色、味などの原因で市場価値が低く、地元の漁師たちから嫌われてしまい、どんどん繁殖が進んでいきました。
その結果、ヨスジフエダイは在来種の存在を脅かす生物として、漁師だけでなくハワイの環境を守る人々たちにも嫌われていってしまいます。

ハワイの重要な漁業資源のため、食物連鎖の空白を埋めるため、他国から持ち込まれたヨスジフエダイ。
後年になって市場価値の低下から漁獲されず、在来種の脅威となり、食物連鎖をバランスを脅かす悪害な生物として忌み嫌われた悲しき生物となってしまいました。
2008年以降は個体数を減らすことを目的としたスピアフィッシングの大会も開催されているそうです。

そんな悲劇の生物ですが、私たちダイバーにとっては沈船ポイントを彩る華やかな存在です。
日本にも生息している普通種ですが、ハワイでの歴史を知れば普通種だとしても紹介せずにはいられません。

こちらの写真以外に、オーナーHiroが撮影したハワイの生物たちの写真をHPにアップしています。
ぜひこちらのフォトギャラリーをぜひご覧くださいませ。